「洋風」青じそドレッシングについて
ドレッシングは洋風のものだ。だから、和風な味わいのドレッシングを「和風」ドレッシング」と呼ぶ。
それらを合わせて「和風青じそドレッシング」と呼ぶこともあるだろう。
しかし、なにか感じないだろうか、違和感を。いつも通る道が違った道に感じられるときのような、公衆トイレのトイレットペーパーホルダーが自宅と反対側についてて引き出すときに利き手が逆になるときのような、スキー靴を脱いだ直後の足のような、そんな違和感。
その違和感の理由は簡単である。
この世界は、何者かによって「洋風青じそドレッシング」が存在しないように改変されてしまったからである。
といっても、私以外の誰も「洋風青じそドレッシング」がどんなものだったかを思い出すことはできない。思い出そうとしても、まるで夏の日のそうめんのように箸からするするとこぼれ落ちてしまうのだ。
しかし、幸いにも反作用で生じた「和風青じそドレッシング」は、いまも存在が消されていないし、比較的どこでも購入が可能である。
そこで一つだけ、これを読み終わったあとで頼みがある。どうか、和風青じそドレッシングまでもが消されてしまう前に、もう一度それを味わって食べてほしい。そうすれば、あの「洋風青じそドレッシング」を思い出せるかもしれない。
私は待っている。あなたが一番好きだったドレッシングを思い出すのを。